八王子居酒屋ひとり酒
一時限目。自主性
諸君、私が居酒屋大学教授のイケナミである。
昨今の若者たちは酒を飲まなくなったというが、飲まないのではなく、酒の飲み方を知らないのだ。
サークルだ合コンだと飲み会はやるものの、たいていは大手チェーン居酒屋で、甘ったるいオモチャみたいな酒ばかり飲んでいる。
ガヤガヤ騒ぐだけで肴もろくに味わわない。
かと思えば、ネットで探した老舗に押しかけ、飲んだこともなにクセに「ここの日本酒はねぇ」などと通ぶっている。
実にけしからん!
居酒屋大学を開催します。北から南までめぐりに巡った8000軒は感動の余韻の時もあればお金を棄てたような気分の時もある。一人でも多くの方に感動の余韻で帰宅の途についてほしい。それが自分の願いでもある。そして自分なりの8000軒の経験から学び生まれた哲学があります。独断と偏見?と辛口のご意見は承知しながら「失敗しない居酒屋巡り」をこの場をお借りして説いていきたい。それがこの大学の講義の目的です。失敗から学べという言葉があるが、失敗はないほうが素晴らしい。(俺の持論)
一時限目:居酒屋の達人、食の通人になるにはコース料理は求めるべからず。
居酒屋は酒を片手に値段明記の品書きから好きなものを適当に注文し、いつまでもだらだらしていられるが、割烹コースはそうではない。
コース料理がどんどん出てきて酒を味わうひまがなく、好みの肴は選べない。
苦手な料理が出ることも多々ある。
また居酒屋の楽しみの一つである主人や女将との会話が生まれる雰囲気はない。
最後に出てきたアイスクリームに手をつけることなく席を立ち、ああやっぱり酒飲みには合わんなと後悔する。
しかし値段明記のアラカルトで楽しめる割烹もある。
例えば京都の割烹コース料理屋は、先付、椀物、向付、鉢肴、強肴、止め肴、水菓子と決まった流れが順番に出てくる。
私とて経験しているが、これはちっともおもしろくない。
女性や御上りさんは、ちまちま色んなものが並ぶのを「まあ、きれい。へーおいしい」と喜ぶけれど、粋な酒飲みにはコースほどつまらないものはない。
アラカルト割烹の最大の楽しみは、お仕着せではなく自分で選ぶ自主性にある。
アラカルトメニューから自分でコースを組み立てる、食べる側の腕の見せ所が大切。
ただ出されるがままに食って喜ぶのは「いいなり」に慣れている。
自分で金を払うのだから自分が食べたいものを自由に選ぶこと。
知らず知らずのうちに結果的いいなりになるのが好きな人が日本人には多い気がする。
これは戦後教育だろう。
コース料理専門店は店のメリットしかない。
仕込みはコース一種で手間が省ける、コース専門なら予約制だから食材ロスはゼロ。その時安い食材を仕入れてコースに組み込むこともできる。
店側の一石三鳥!
理想の商売。
ここで学び変わってほしい。
自主性が無く、それを喜ぶ生徒は落第となる。
自分の好きなものを自分で選んで自分なりのコース料理を組み立てよう。
↑旬を大切に選ぶこと。初夏ならカツオだ。これはハガツオ
↑酒飲みの定番塩辛。好みはあまり塩辛くないのが良い
↑アサヒガニ。珍しい食材があれば迷わず選ぶべし。たとえそれが高価でも
↑飲み歩きの〆はラーメンは控えるべき。輸入小麦の本質を独自で勉強するべき。おすすめはお茶漬けか巻きずし、おにぎり、雑炊など
◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規8000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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