杉並区暮らしのお役立ちサイト
平成元年5月に開館された杉並区立郷土資料館
【旧井口家住宅・長屋門】
歴史的建造物、旧井口家住宅長屋門
旧井口家住宅長屋門は、東京都杉並区大宮1丁目に位置する杉並区立郷土博物館の入口として現存する歴史的建造物です。もともとは宮前五丁目に所在した井口桂策家の表門で、昭和49年(1974年)に杉並区へ寄贈され、現在地に移設されました。
この長屋門は、江戸時代の文化・文政年間(1804~1829年)頃の建築と推定されています。構造は、中央に通路を設け、右手に土間の納屋、左手に板床の蔵屋を配置しています。蔵屋には年貢米が収納されており、長屋門は格式や権威を示す象徴的な建物として機能していました。井口家は大宮前新田を開発し、代々名主を務めた家柄であり、この長屋門からもその格式の高さがうかがえます。
なお、屋根はもともと茅葺きでしたが、防火上の理由から、現在は茅葺き屋根の形状を保ちながら銅板で葺かれています。この長屋門は、杉並区指定有形文化財(建造物)として登録されています。
また、井口家は江戸時代に大宮前新田(現在の宮前地域)を開発し、名主として地域社会に貢献しました。井口杢右衛門は、井口山慈宏寺や大宮前春日神社を創建するなど、地域の発展に寄与したとされています。
現在、この長屋門は杉並区立郷土博物館の入口として、訪れる人々に歴史的な風情を伝えています。
長門門をはいり博物館入口までは庭石も配置されています
1階 常設展示室
常設展示室は杉並区の原始・ 古代から近現代までを紹介しています
杉並区井草遺跡から出土した「井草式土器」(縄文時代早期前半:約9000年前)を展示
常設展の「原始・古代」コーナーでは、旧石器時代から古墳時代までの環境変化に注目し、武蔵野台地の大地と水環境、そしてそこに暮らした人々の様子を紹介しています。
井草遺跡から発掘された 井草式土器(杉並区唯一の標式土器)や石器など、区内各遺跡出土の遺物が並び、縄文時代の生活ぶりを伝える貴重な資料となっています。また下高井戸塚山遺跡から出土した土器・石器など、多数の考古資料も展示されています。
常設展示室に入ってすぐ、杉並区の地形図と遺跡分布を示した大型模型があります。
ボタンを押すと該当遺跡の位置に小さな電球が点灯する仕掛けになっており、遊び心のあるインタラクティブ展示です。
この地形模型と遺物の展示によって、杉並における約3万年にわたる歴史の歩みが体感的に理解できるよう工夫されています。
さらに、各時代の景観復元イラストや解説パネルを通じて、縄文時代の集落や武蔵野の自然環境を具体的にイメージできるようになっています。
縄文早期の井草遺跡の復元図では、水辺に住居が営まれた様子が描かれ、当時の人々のくらしと井草川との関わりを感じ取ることができます。こうした展示を通じ、杉並の原始・古代における人々の営みを「井草川」という自然環境との関係から学べるようになっています。
武家政権と人々の暮らし
江戸時代の甲州街道・高井戸宿を再現した大型ジオラマ展示。街道沿いには旅人向けの「外便所」まで作られている。常設展の「中世」「近世」コーナーでは、戦国期から江戸時代にかけての杉並の様子と人々の暮らしが紹介されています。
特に江戸時代の暮らしを伝える展示として、甲州街道・上高井戸宿の街並みを再現したジオラマが目玉です。
田畑が広がる中に家々や旅籠が立ち並び、街道沿いには旅人用の外便所まで作られており、当時の村の生活環境を細部まで再現しています。この模型により、江戸時代の杉並(甲州街道沿いの宿場町)の風景を実感をもって想像することができ、来館者の想像力を掻き立てています。
実際、展示解説でも「内藤新宿がにぎわうにつれてどんどん寂れた高井戸宿。それでも旅人よりの肥料(下肥)を得るために外便所を街道に面して設けた」と紹介されており、生活の知恵や当時の庶民の工夫に来館者は思わず引き込まれます。 江戸時代の杉並には20の村があり、展示では各村に残された古文書や村絵図をもとに人々の暮らしぶりを丁寧に解説しています。
馬橋村の家族構成の統計(江戸期の村明細帳に基づくパネル)からは、当時は大家族が主流と思いきや3人世帯が最も多く、独居も少なくなかったことが示されています。
何気ない史料から江戸庶民の生活感を伝える工夫が随所に凝らされ、地味に思える武蔵野の農村開拓の歴史を飽きさせず紹介しています。
近現代コーナー
明治維新後、杉並地域は東京府に編入され、関東大震災以後は郊外住宅地として人口が急増しました。
展示室ではこの近代化の流れを 「明治以降」「震災以後」「戦中期」「戦後復興」 の4つの時期に区分し、それぞれの時代の杉並の景観変遷と人々の営みを映し出しています。
杉並区が誕生する昭和初期までの都市化の歩みが具体的に理解できるようになっています。
「杉並と戦争」「戦下のくらし」といったコーナーでは、昭和戦中~戦後の人々の暮らしに焦点を当てています。
杉並区は昭和20年の空襲では死者181名、11,840棟全焼という被害があり、疎開や戦時体制が人々の生活に影響を与えました。
展示ケースには、集団疎開に送り出された小学生たちの持ち物リストや、田舎から家族に宛てた葉書などが並んでいます。
明治から昭和(戦後)に至る近現代の杉並の歩みを、多角的な資料で“窓”を開くように紹介しています。明治維新後、杉並地域は東京府に編入され、関東大震災以後は郊外住宅地として人口が急増しました。
展示室ではこの近代化の流れを 「明治以降」「震災以後」「戦中期」「戦後復興」 の4つの時期に区分し、それぞれの時代の杉並の景観変遷と人々の営みを映し出しています。
写真資料や地図、統計グラフを用いたパネルでは、大正12年(1923年)の震災復興事業による区画整理図や、昭和7年(1932年)杉並区成立当時の地図などを掲示しています。
常設展示の横には読書スペースと博物館外の庭にでられます
常設展示の横には杉並区の歴史などに関する書物を読むことができる読書スペース
「旧篠崎家住宅主屋」
江戸時代中期の農家住宅である古民家「旧篠崎家住宅主屋」
江戸時代中期の農家住宅である古民家「旧篠崎家住宅主屋」
館外には、江戸時代中期の農家住宅である古民家「旧篠崎家住宅主屋」が移築復元されています。
茅葺き屋根の民家は杉並区指定有形文化財で、土間や座敷など当時の暮らしの舞台を体感できる貴重な空間です。
靴を脱いで室内に上がることが可能で、囲炉裏や梁など昔の住まいの造りを間近に見学できます。
ボランティアのの協力で年間を通じて土・日・祝日の午後0時30分から囲炉裏で火を焚き(※夏期を除く)、茅葺き屋根を保護するための燻蒸と昔の生活を知ってもらうための案内をしています。
ここでは囲炉裏の火吹きや石臼ひきの体験ができます。囲炉裏に実際に火が入れられ、冬場には暖かな炉端でボランティアスタッフから古民家や杉並の暮らしにまつわる話を聞くこともできます。触れることのできる古民家という体験型展示は、昔のくらしを五感で味わえます。
昭和24年から45年まで製造された鉄製の郵便ポスト
清朝最後の皇帝溥儀の実弟、愛新覚羅溥傑(あいしんかくら ふけつ)とその家族の物語
杉並区は、歴史的に多くの文化人や著名人が居住した地域として知られていますが、その中でも特に興味深いのが、清朝最後の皇帝溥儀の実弟、愛新覚羅溥傑(あいしんかくら ふけつ)とその家族の物語です。
愛新覚羅溥傑は1907年に生まれ、兄である溥儀とともに清朝の皇族として育ちました。彼の人生は、時代の波に翻弄されながらも、日本との深い関わりを持つものでした。
昭和天皇の遠縁にあたる嵯峨浩(さが ひろ)との結婚は、政治的背景を持ちながらも、深い愛情に支えられたものでした。
戦後、溥傑はソ連や中国に収監され、一家は離れ離れの生活を余儀なくされました。その中で、次女の嫮生(こせい)さんは、母・浩とともに中国大陸を転々とし、最終的には日本へ引き揚げました。彼女たちの苦難の歴史は、多くの人々の心を打ちました。
溥傑は学生時代に杉並区天沼で下宿生活を送ったことがありました。また、郷土博物館のある場所には、妻の浩の母や祖父母が居住していました。浩自身が杉並で長期間居住した事実はありませんが、結婚式の日には祖父母宅から式場へ向かっており、こうした縁も杉並区の歴史の一部として記憶されています。
杉並区における愛新覚羅家の足跡は、地域の歴史と深く結びついています。彼らの物語は、戦争や政治の荒波の中でも家族の絆を守り抜き、異国の地で新たな生活を築いた強さと希望の象徴と言えるでしょう。
2階の常設展示
2階の廊下は道村博氏(みちむ らひろし)撮影の-鉄道写真から-がパネルで展示されていました
昭和の暮らし
さまざまな電化製品や生活雑貨などが普及した「昭和」の時代。
ギザギザのある洗濯板や一槽式洗濯機(ローラーに洗濯物を通してハンドルを回すと脱水ができる)石でできた流し台、ブラウン管の白黒テレビや足踏みミシン、木の風呂桶。ちゃぶ台を囲んで座って食べる日本文化の当時の様子が再現されています。
2024年(令和6年)には巡回展『おいしいくらし』も実施。
昭和後期以降に流行したキッチンツールや当時の台所家電のデザインなどが楽しめるレトロな展示に注目が集まりました。
家具から小物、食卓に並んだ食事など昭和の日本の家庭が再現されています
「氷冷蔵庫」
電気を利用して保存するものではなく上の小さな扉を開けてその中に氷を入れて食品を保存していました
スロープとエレベーターがあり、バリアフリーに対応した施設です
編集後記
郷土の歴史に触れて
杉並区立郷土博物館は、歴史的な出来事を単なる知識として伝えるのではなく「暮らし」という親しみやすい視点から紹介している点が印象的でした。
展示の解説パネルには難しい専門用語を避け、地域のエピソードと絡めて親しみやすく説明されています。
展示室に設置された模型のボタンを押すと遺跡が光る仕掛けや、実際に古民家に上がって昔の暮らしを体験できる演出など、来館者が参加しながら楽しめる要素が充実しています。
旧石器時代から現代まで、約3万年もの長い歴史を「暮らし」を軸にたどることができる杉並区立郷土博物館。
郷土の歴史への愛着が湧くと同時に、日常の風景が少し違って見えるようになりました。
ぜひ一度足を運び、展示ケース越しに広がる歴史の世界を体感し、先人たちの営みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、新しい発見と郷土への深い愛情が生まれることと思います。
郷土博物館の学芸員の森泉さんに展示品の解説をしていただきました。
ありがとうございました。
杉並区立郷土博物館(本館)
杉並区立郷土博物館(本館)
※杉並区立郷土博物館(分館)
杉並区天沼3-23-1にあります。
| 住所 | 杉並区大宮1-20-8 |
| 電話番号 | 03-3317-0841 |
| 開館時間 | 9時~17時まで 毎週月曜日・毎月第3木曜日(祝日と重なった場合は開館、翌平日休館) 12月28日から1月4日まで |
| 観覧料 | 100円 中学生以下は無料 障がい者手帳等を提示する方、及びその付き添いの方は無料 20名以上の団体:1名80円 |
井の頭線永福町駅北口より徒歩15分
バス「都立和田堀公園」下車徒歩5分
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