杉並区の神社に「笑顔の狛犬」がいるというのは
杉並区のあるあるとして時々耳にするのが、「杉並区の神社には笑顔の狛犬がいる」という話題です。
結論から言えば、これは本当です。
その代表格が、杉並区和泉にある和泉熊野神社。境内に入ると、参道途中で出迎えてくれる一対の狛犬が、まるでスマイルマークのように優しく口角を上げ、やわらかな目元で参拝者を迎えてくれます。この表情から「笑顔の狛犬」「スマイルフェイス狛犬」と呼ばれ、訪れた人の心を和ませています。
狛犬の歴史と背景
和泉熊野神社には狛犬が3対あり、その中で笑顔で知られるのは明治4年(1871年)奉納の一対。石工名は刻まれておらず不明ですが、奉納から150年以上経た今も、その表情は多くの参拝者に強い印象を残しています。
全国の狛犬は一般的に威厳ある表情や厳しい面持ちが多く、「魔除け」や「守護」の意味が込められています。しかし、江戸末期から明治にかけての一部地域では、柔和で親しみやすい表情の狛犬が彫られることもあり、豊穣や平穏を願う意匠として好まれた例も確認されています。和泉熊野神社の狛犬も、こうした流れの中に位置づけられる可能性があります。
なお、東京や近郊の狛犬について詳しく知りたい方には、写真と解説が充実した
東京狛犬倶楽部のウェブサイトがおすすめです。和泉熊野神社の各狛犬の写真とデータも掲載されており、現地に行く前に予習ができます。
笑顔は意図されたものか?
この狛犬が「意図的に笑顔とされた」のかどうか、残念ながら一次資料や公式記録は見つかっていません。地元の郷土史や区の文化財資料にも、作者の狙いや彫刻意図についての記載はなし。ただし、左右一対ともに口角の上がり方や目尻のカーブが均整に揃っており、偶然そう見えるというよりも「柔らかな表情」を意識した可能性が高いと考えられます。
石工が「参拝者を笑顔で迎えたい」と思って彫ったのか、それとも当時の地域の趣向が反映されたのか――真相は今も謎のままです。
杉並区以外にも「笑顔の狛犬」はある
全国を見渡すと、笑顔に見える狛犬は北海道の江部乙神社、神奈川の三浦海南神社、奈良の水口神社、京都の下御霊神社などにも点在しています。しかし、全体の中ではごく少数派で、杉並区の和泉熊野神社は関東における貴重な例といえます。
まとめ
資料からもわかるように、「笑顔」が意図的であったかどうかは分かりません。しかし、その場に立って見上げれば、参拝者が自然と穏やかで幸せな気持ちになるのは間違いありません。
皆さんもぜひ、神気溢れる熊野神社に足を運び、笑顔の狛犬に会いに行ってみてください。そこには、時代を超えて変わらない“人を迎える温かさ”が、静かに息づいています。