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【高円寺】セシオン杉並 杉並洋舞連盟 第32回公演

セシオン杉並 杉並洋舞連盟 第32回公演に行ってきました

多様な表現が交差する舞台

静まり返った客席に、最初の一歩が刻まれた瞬間、舞台の空気がゆっくりと動き始めました。

杉並区の舞踊文化を支え続けてきた杉並洋舞連盟による第32回公演が、セシオン杉並にて開催されました。

今回、私たちもご招待をいただき、客席から公演を拝見させていただきました。

本公演は、クラシックバレエ、モダンダンス、コンテンポラリーダンスなど、多様なジャンルによる作品が連続して上演されるオムニバス形式の舞台です。
一つの物語を追うのではなく、それぞれの作品が独立しながらも全体として一つの流れを形成していました。

『A Happy Nightmare(ご機嫌な悪夢)』

公演の幕開けを飾ったのは、小島崇行さん振付によるモダンダンス作品『A Happy Nightmare(ご機嫌な悪夢)』です。

舞台が始まった瞬間から、通常の“物語的な舞台”とは異なる空気が流れていました。
明確なストーリーではなく、断片的な動きや関係性の中から意味が立ち上がってくる構成です。

身体の角度、動きの間、視線の方向、一つひとつの要素が強い存在感を持ち、静と動のコントラストが際立っていました。

ゲストとして出演された膳亀利次郎さんの存在も印象的で、舞台上に現れた瞬間に空間の重心が変わるような緊張感が生まれていました。

言葉ではなく身体で語る表現の力を、強く感じさせる幕開けでした。

ゲストダンサー紹介、膳亀利次郎さん

膳亀利次郎さんは、モダンダンスやコンテンポラリーダンスを中心に舞台経験を積み重ねてきたダンサーです。

その特徴は、技巧の誇示ではなく、「存在そのもの」で空間に影響を与える身体表現にあります。

舞台上では、動いていない時間でさえも視線を引き寄せるような独特の存在感を持ち、作品全体の緊張感や重心を支える役割を担います。

モダンダンスにおいて重要とされる、
・空間の使い方
・間(ま)の取り方
・沈黙の中での表現
といった要素を体現するダンサーのひとりです。

今回の公演では、小島崇行さん振付『A Happy Nightmare(ご機嫌な悪夢)』にゲスト出演し、
作品世界に深みと緊張感を与えています。

物語と現代表現の融合『絶望に咲いた、火』(ヘンゼルとグレーテルより)

続いて印象的だったのが、コンテンポラリーダンス作品『絶望に咲いた、火』です。

童話「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフとしながらも、物語をそのまま再現するのではなく、感情や状況を抽象的に表現していく構成でした。

恐れ、不安、孤独、そしてかすかな希望。
それらが身体の動きとして現れ、舞台全体が一つの心理空間のように感じられました。

照明や間の使い方も印象的で、観る側の解釈に委ねられる余白のある作品でした。

個が際立つ「スポットライト」

公演の中盤では、ダンサー一人ひとりに焦点を当てたソロ作品「スポットライト」が上演されました。

『The Sense of Wonder』では、静かな動きの中に内面の広がりを感じさせ、『タチアオイの咲く庭』では、柔らかさと強さが共存する表現が印象に残ります。

『見えない森』では、目に見えない存在や気配が空間に漂い、『「海賊」より 花園のヴァリエーション』では、クラシックバレエの技術と華やかさが際立っていました。

それぞれの作品が、ダンサー自身の個性を際立たせる時間となっていました。

杉並洋舞連盟第32回公演
「A Happy Nightmare-ご機嫌な悪夢-」
振付:小島崇行
「絶望に咲いた、火」
振付:渡部 義紀
スポットライト
「The Sense of Wonder」 出演:滝本 月乃
「タチアオイの咲く庭」出演:星野 カノン
「見えない森」出演:宝地戸 小春
「海賊」より花園のヴァリエーション 出演:宮脇 香絵
「ライモンダ」より第3幕
振付:田中祐子

公演のフィナーレ『ライモンダ』第3幕

そして公演の最後を飾ったのが、クラシックバレエ『ライモンダ』第3幕です。

群舞の整った構成、流れるようなフォーメーション、華やかな衣装。
それまでの作品とはまた異なる、完成された美の世界が広がっていました。

一人ひとりの技術だけでなく、全体の調和によって生まれる美しさ。
舞台全体が一体となることで、観る者に強い余韻を残すフィナーレとなっていました。

多層的に構成された舞台

クラシックの厳格な美しさ。
モダンの自由な身体表現。
コンテンポラリーの抽象性。

それらが一つの舞台の中で交差することで、杉並区の舞踊文化の広がりと深さを実感できる構成となっていました。

若いダンサーと経験豊富なダンサーが同じ舞台に立つことで、舞台全体に自然な緊張感と厚みが生まれていたことも印象的です。

本番の舞台を支える「稽古」という時間

今回の公演に先立ち、クラシックバレエとモダンダンスの稽古も見学させていただきました。

稽古場には、本番とはまた異なる空気が流れていました。
バレエのレッスンでは、一つひとつの基本動作を繰り返す中に、張り詰めた集中力が感じられます。
静かな空間の中で積み重ねられる基礎が、そのまま舞台の完成度につながっていることを実感しました。

一方、モダンダンスの稽古では、身体の動きだけでなく、間や呼吸、視線といった要素を探りながら表現を作り上げていく過程が印象的でした。
同じ「踊り」でありながら、そのアプローチの違いがはっきりと感じられます。

膳亀利次郎さんが稽古に加わった瞬間、場の空気が変わるのも印象的でした。
言葉を発するわけではないのに、身体の存在だけで空間に緊張感が生まれる。
経験を重ねた表現者の力を感じる場面でした。

そして何より印象的だったのは、若いダンサーたちの真剣な眼差しです。
同じ空間で踊ること、その一瞬一瞬を吸収しようとする姿勢が、稽古場全体に広がっていました。

舞台の完成は、こうした積み重ねの上に成り立っていることを、改めて感じる時間でした。

練習風景 杉並洋舞連盟公式Facebookより

編集後記

このたびは杉並洋舞連盟の皆さまにご招待いただき、心より御礼申し上げます。
客席から公演を拝見し、舞台の一つひとつの表現の裏にある積み重ねを感じることができました。

一方で、今回は客席での観覧という立場であったため、すべての場面を撮影し、詳細にお伝えすることができなかった点につきましてはお詫び申し上げます。

それでもなお、今回の舞台からは杉並洋舞連盟の皆さまが積み重ねてきた文化の厚みと、これからの可能性を強く感じることができました。

杉並の地に根付く洋舞文化が、今後さらに発展していくことを心より期待しております。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。