日本の伝統を継承する 東京大工塾

杉並区内にある企業
暮らしのもと 「くらもとBASE」は、株式会社ハウステックスが提供する住空間のコンセプト

東京・杉並に拠点を構える「ハウステックス」。その佐藤義明社長が語る言葉の端々には、職人としての誇りと、人と人をつなぐ空間づくりへの想いがにじみ出ていました。
私は30歳のとき東村山で起業しました。
その後は、西東京、小金井へと拠点を移しながら、元請けとして地域に根ざした家づくりを行ってきました。時代の流れとともに変わっていく中で、品質や信頼を、自らの手で担っていきたいという想いから、下請けより元請けへの転換を決意したのです。
そして今、杉並にたどり着いたのは、原点回帰でもあります。実は私自身が若い頃に杉並・西荻窪の工務店で修業していたこともあり、この地域には特別な思いがあります。再びこの地で、建築を通じて何かを還元したいと考えております。


私たちハウステックスは、東京都内を中心に土地探しから注文住宅、リフォーム工事を行う地域密着型の工務店です。現在、30名の社員が在籍しており、木造・鉄骨造・RC造に加え、高耐震構造であるSE構法にも対応しております。
建築の魅力は、ゼロから形を創り上げていくプロセスにあります。私たちは、設計段階から3Dパースなどを用いて、お客様がイメージしやすい家づくりをご提案しています。デザイン力では、業界最大級のコンテストである「LIXILメンバーズコンテスト」に2012年より12年連続の受賞し、品川で手がけた住宅では2016年に全国準大賞という評価を頂戴しました。(2020年は開催しておりません)
杉並の社屋には、私たちの理念をかたちにした複合施設「くらもとBASE」があります。
名前の由来は「くらしのもと」。単なる建物ではなく、人が集まり、時間を共有し、文化が育まれる場所、つまり、暮らしの出発点であり基盤となる空間を目指しています。
1階にある「くらもとカフェ」では、コーヒーを楽しみながら建築やインテリアなどの書籍を自由に閲覧できる気軽な空間を用意しております。地下の「くらもとシネマ」では、SDGsをテーマとした映画上映と上映後にディスカッションを定期的に開催し、学びと交流の場を提供しています。
また、地下のイベントホールはレンタルスペースとしても開放しており、ヨガやワークショップ、アート系の教室など、さまざまな地域活動の拠点として活用されています。
年4回「夏祭り、新春フェスタ、くらもとマルシェ(春・秋)」のイベント開催は、私たちが地域と繋がるもう一つの大切な取り組みです。木工教室やワークショップ、無料建築セミナーなど、多彩な催しを通じて、地域の皆さまと楽しい時間を共有できることを嬉しく思っております。

ショールーム
リビングは、造作棚や床に、世界3大銘木のひとつであるチーク材を使用し、ワンランク上の空間を演出
明るく広々としたくつろぎスペース
この「くらもとBASE」は、非常時に地域の方々が避難できる防災拠点としての役割を担っています。
屋上には16.5kwの太陽光パネルと11.2kw蓄電池を備え、高い防災性能・設備を完備。
有事の際には地域の避難場所として、電気の供給を可能にしています。
地下は広く、耐震構造にも優れており、シェルターとしての機能があります。
30年以内に首都直下型地震が起きる確率は70~80%とも言われております。「明日」かもしれない危機に備え、地域の“くらしのもと”として、安心と共助の機能も果たしたいと考えています。

リラクゼーションルーム
ラグジュアリーホテルで愛されているバスタブと
間接照明で癒しの空間を演出

チェリールーム
ブラックチェリー材をふんだんに使った打合せスペース、カタログサンプル帳を収納する大容量の本棚を設置

オークルーム
テーブルなどは大工さんが制作した造作家具
存在感のある大テーブルがあり、受付を兼ねた、広いミーティングスペースです

キッズルーム(チェリールーム)
家をかたどったユニークなデザイン!キッズルーム扉を開けると隣のチェリールームに繋がります

ウォールナットルーム
上質で高級なブラックウォールナット材を使用
シックな深緑の壁紙に飾り棚を設け、落ち着いた空間を演出
くらもとカフェは、私が「地域の方々が気軽に立ち寄れるコミュニティーカフェをつくりたい」という想いからスタートしたスペースです。家づくりや設計の相談はもちろんのこと、日々の暮らしの中でほっと一息つける居場所になればと考えております。
このカフェでは、厳選された青空豆店の自家焙煎珈琲豆を使用したストレートコーヒーを提供しています。インテリアは木の温もりを感じられるように設計しており、家具や什器の多くは大工の手による造作です。
特にこだわっているのが、壁一面に並ぶ蔵書の数々です。建築や住まいに関する書籍はもちろん、暮らしを豊かにするアイデア本や、地域の歴史・文化を学べるような本も揃えています。お客様が手に取りやすいように、ジャンルごとに整理し、読書スペースも設けております。こうした本の存在が、建築や暮らしに対する新たな関心や発見に繋がってくれたらと願っております。
カフェとしての顔を持ちながらも、実はここは“暮らしの相談窓口”でもあるのです。例えば、「ちょっとしたリフォームがしたいけど、どこに相談したらいいか分からない」「家づくりをいつかしたいけど、何から始めればいいのか…」そんなお悩みをお持ちの方に、カフェのテーブルでコーヒーを飲みながら、リラックスしてお話しいただけるよう心がけています。
また、地域の活動にも積極的に活用されており、地元の方々による小さな展示会や、手作り雑貨の販売、ワークショップなども不定期で開催しています。季節ごとに内装を変えたり、イベントに合わせたメニューを考えたりするのも、スタッフと一緒に楽しみながらやっています。
地域の暮らしに根ざした空間、それが「くらもとカフェ」です。



香り豊かなアイスコーヒー

人気のクロックマダム
地下にある「くらもとシネマ」では、定期的に社会的・文化的テーマに焦点をあてた映画を上映しております。上映後にはお客様同士で感想を共有したり、スタッフも交えて対話が生まれたりと、ただ観るだけではない“交流の場”としてご活用いただいています。配給会社との提携により、月ごとに選ばれた作品を上映しており、地域であまり観る機会のない貴重な作品に触れられる機会としても好評です。
「くらもとファクトリー」は、私たちの職人技術やものづくりの原点を感じていただける空間です。大工道具や加工の実演が行える設備もあり、木材の香りが漂う中で、実際に手を動かすワークショップなども開かれています。ここでは地域の子どもたち向けの工作教室や、DIY初心者向けの講座も開催しており、親子で楽しめるものづくりの場としてご好評をいただいております。
くらもとシネマ・くらもとファクトリーこのふたつの空間は、どちらも“体験を通じて学び、つながる”をテーマに、私たちが大切にしている地域との関係を育む役割を果たしてくれています。

くらもとCINEMAのエントランス

多目的スペース

スクリーンを下すと映画館

自分の手で建てた家が何十年もそこに在り続ける。そこに人が住み、家族の時間が重なり、未来へと受け継がれていく、そんな誇らしい仕事に、若者たちがもう一度魅力を感じてもらえるよう、これからも全力で支えていきたいと思っています。
私が長年感じてきたのは、「大工」という職業の魅力が、現代に正しく伝わっていないということです。かつて全国に84万人いた大工は、今や30万人を切りました。しかも高齢化が進み、若手が育たない。これは、業界の存続にも関わる深刻な問題です。
そうした課題に向き合うべく、有志と「東京大工塾」という大工の育成機関を立ち上げました。この塾では、2年間の育成カリキュラムの中で、現場実務と、職業訓練校通学を組み合わせて学んでもらっています。制服・道具・通勤車両などはすべて会社が用意し、給与も支給します。
しかし、それでも半数以上が途中で離れてしまうのが現実です。今の時代、徒弟制度のように「親方の背中を見て学ぶ」という文化では通用しません。体系的に、かつ生活の安定も保証しながら教えていく仕組みが求められているのです。
現在、伝統的な技術、かんな掛け、墨付け、手刻みを本当に理解しているのは、恐らく40代以上の年齢の職人に限られるでしょう。今やプレカット工法が主流で、材料はすでに工場で加工され、現場では「組み立てるだけ」になってしまっているのです。
ですが、私は「それでも伝えるべきものがある」と信じています。これらの技術は、ただのノウハウではなく、日本の文化そのものだからです。

佐藤義明社長が修業時代より大切にしてきた「大工道具」

佐藤義明社長が修業時代より大切にしてきた「鑿(のみ)」
私が長年建築の仕事をしてきた中で、杉並というまちは非常に魅力ある地域だと感じています。自然が豊かで、文化的な営みも深く、人と人とのつながりもあたたかい。そんな杉並で建築に携われることに感謝しています。
一方で、今の時代、職人を育てる場が本当に少なくなってしまいました。私は、できれば杉並の中に、大工や職人が訓練できる作業場、たとえば木材加工ができるような広いスペースや実習施設、があれば良いと強く思っています。地域の工務店が共同で使える場所があれば、次の世代を育てることにも繋がるのではないでしょうか。
また、杉並で私が好きなスポットを挙げるとすれば、まずは永福町にある「大勝軒」ですね。味はもちろん、地域とのつながりを大切にしている姿勢も素晴らしいお店です。
それと、私が休日に楽しみにしているのが、善福寺川や神田川沿いの散歩です。特に久我山や西荻のあたりは緑も多く、水辺の景色がとても美しくて、心が落ち着く場所です。建物を見ながら川沿いを歩くと、ふとアイデアが浮かんだりすることも多いんですよね。
杉並という場所には、仕事でも、暮らしでも、心が安らぐ要素がたくさんあると感じています。だからこそ、このまちで次の世代に繋がる“ものづくり”を、もっと根付かせていきたいと考えているのです。
編集後記(まいぷれ杉並区編集部より)
今回のインタビューで出会った佐藤社長は、まさに“誇り高き大工職人でありながら、地域と人を愛する紳士”でした。
初対面の私たちにも気さくに接してくださり、笑顔を交えながらも芯のある言葉で丁寧に語ってくださった姿に、深い敬意と感謝の気持ちを抱かずにはいられませんでした。
企業の代表という立場にありながら、地域のこと、日本の未来のこと、そして何より若い大工たちの将来を真剣に考えておられる姿勢に、私たちは心から感動いたしました。現代では忘れ去られがちな「伝統を守る」ということを、理想論ではなく“現実の事業”として実践しているその姿勢は、まさに未来への架け橋だと感じます。
「職人が育つ場所を杉並に作りたい」という言葉には、建築の技術だけではなく、人を育てることへの使命感が込められていました。そして、永福町の大勝軒や、善福寺川・神田川沿いの散歩道を愛する“杉並人”としての一面にも、地域への深い愛着を感じました。
正直申し上げて、今回の取材では佐藤社長とハウステックスさんの魅力をすべてご紹介するには時間が足りませんでした。映画制作や東京大工塾の未来像など、まだまだお伺いしたいお話がたくさんあります。
次回、また改めて取材の機会を頂けることを願ってやみません。
最後に、今回の取材に際し、多大なるご協力をいただきましたハウステックスの広報ご担当・櫻井隆様、そして何よりも、我々の取材を快く受け入れてくださった佐藤義明社長に、改めて深く御礼申し上げます。
地域と未来を見つめ、地に足のついた素晴らしい活動をされているハウステックスさんと佐藤社長に、これからも多くの方が出会ってくださることを、編集部一同心より願っております。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

【永福町】株式会社ハウステックス
暮らしのもと 「くらもとBASE」は、株式会社ハウステックスが提供する住空間のコンセプト

【高井戸】 ケンコーマヨネーズ株式会社