
まいぷれ杉並区スタッフが行った!みた・きいた!
「TOKYOカグラッ子プロジェクト実行委員会」主催の遅野井(おそのい)こども神楽へ

井草八幡宮の正門、北参道の大灯籠

俗界と神域を分ける結界の役割を持つ井草八幡宮の立派な鳥居

井草八幡宮神楽殿

源頼朝が奉納したと伝えられる老松の切り株
源頼朝公が奥州征伐の戦勝祈願の後、1193年(建久4年)に自ら植えたと伝えられる松があります。この松は、雌雄二本の松で、雌松(赤松)は明治時代に枯れ、雄松(黒松)は昭和47年(1972年)の強風で大枝が折れ、翌年に枯れてしまいました。
奉納された演目は、井草八幡宮に伝わる「遅野井(おそのい)」の伝説を題材とした創作神楽です。
源頼朝が奥州征伐の途中、井草の地に立ち寄り、喉の渇きを癒すために家臣に井戸を掘らせたが、なかなか水が湧かず「遅い!」と叱責したという言い伝えによるものです。
その井戸から湧いた水は後に「遅野井」と呼ばれ、現在の善福寺池の源流ともされています。
子どもたちは、その物語を舞とお囃子で表現し、訪れた観客たちに感動を届けました。

井草八幡宮、宮崎昌文(みやざき まさふみ)宮司
井草八幡宮は、源頼朝が奥州征伐の際に戦勝祈願を行ったと伝えられる歴史ある神社であり、地域の信仰を集めています。

TOKYOカグラッ子実行委員
杉並区議会議員・田中ゆうたろう先生
日本の伝統文化を子供たち受け継ぐことの大切さをお話しされました。

武州里神楽「石山社中」(新座市無形文化財)の神楽師・柴田直紀先生
今回の遅野井こども神楽をご指導された柴田先生はご自身も神楽師です。演目「遅野井」の動きとその表現についてわかりやすく解説をいただきました。
この地域は、かつて「遅野井村」と呼ばれていました。江戸時代中期以降、「井草」という名が徐々に浸透し、明治の行政区画整理により正式な地名として採用されます。
「遅野井」は地域の歴史と伝承の象徴、
「井草」は自然と生活に根ざした土地の名。
その両方を背負う神楽は、まさに地元の記憶を舞でつなぐ“生きた文化財”といえるでしょう。

石山家 嫡男
未来へ舞を繋ぐ希望

武州里神楽「石山社中」

古代陰陽師の流れを汲む神楽太夫の家系

石山家 嫡男
埼玉県新座市に根ざす伝統芸能団体「石山社中」。
彼らが継承しているのは、関東に古くから伝わる「武州里神楽(ぶしゅうさとかぐら)」。約400年もの歴史を持つこの神楽は、今なお生きた芸能として、神社の祭礼や舞台芸術として受け継がれています。
石山社中の中核である石山家は、古代の陰陽道をルーツに持つ名家です。
その源流は、京都・土御門家を中心とする陰陽師の流派に属し、かつては朝廷や神社に仕え、神事・祭礼を司ってきた家柄。
石山家は、陰陽道の知識と儀式の技術を神楽に昇華し、「野火止の太夫さん」として江戸時代から武蔵国(現在の埼玉・東京)一帯にその名を広めました。
その舞は単なる芸能ではなく、「祈り」と「鎮め」の力をもって人々の暮らしを支える“神事”そのものだったのです。
現在の十世家元・石山裕雅(いしやま・ひろまさ)氏は、そんな歴史を受け継ぎながらも、現代との接点を意識した活動を展開しています。
神社での奉納神楽に加え、舞台芸術としての公演や、テレビ・CMへの出演、さらには篠笛や能管のオンラインレッスンまで行い、伝統芸能の新たな可能性を切り拓いています。
そして2025年5月5日、東京都杉並区の井草八幡宮で行われた「遅野井こども神楽」に、石山家の嫡男が参加しました。
この神楽は、子どもたちが舞を通じて伝統文化に親しむ貴重な場ですが、そこに“神楽太夫の血筋”を引く少年が立つことで、またひとつ深い意味を持つ舞台となりました。
陰陽師の系譜と神楽の伝統──その両方を受け継ぐ嫡男の姿は、まさに「未来へ舞を繋ぐ希望」そのものです。
現代と伝統の懸け橋として
石山社中の舞は、神を迎え、清め、祈るもの。
しかしその本質は、現代を生きる私たちにも通じる「心の再生」や「つながり」を取り戻す力なのかもしれません。
篠笛の音、神楽鈴の音、舞い手の所作──その一つひとつが、静かに心に沁み入ります。

このプロジェクトは、杉並区議会議員の田中ゆうたろう先生ご夫妻の「子どもたちの発表の場をつくりたい」という一言から始まりました。
公演履歴(時系列)
2019年:プロジェクトの構想が始まる
2020年:初の子ども神楽公演を高円寺・天祖神社で実施(コロナによる舞台中止を受けて)
2021年:活動が拡大し、阿佐ヶ谷・椎名神社や橋場の天祖神社など複数箇所で公演
2022年:井草八幡宮にて「遅野井こども神楽」を初公演
2023年:井草八幡宮で2回目の奉納公演
2024年10月:天沼八幡神社での初公演を実施
2025年5月:井草八幡宮で「遅野井こども神楽」3回目の奉納公演

TOKYOカグラッ子のメンバーは現在6名。年齢は4歳から13歳までで、男女混合ですが、最近は女の子が中心。
稽古は阿佐ヶ谷地域区民センターを拠点に、週1回・1時間という身近なスタイルで続けられています。
最初は少し照れくさい気持ちで始めた子どもたちも、舞台の経験を重ねることで自信を持ち、楽しんで取り組むようになっています。

こども神楽は、「観る文化」であると同時に、「体験する文化」でもあります。
TOKYOカグラッ子プロジェクト実行委員会では、現在も新メンバーを募集しています。
「うちの子にも何か表現する場を…」「伝統文化を体験させてみたい」
そんな方は、ぜひ一度、練習や公演を見に来てください。
お子さんの可能性を引き出す、思いがけない出会いが待っているかもしれません。




2025年5月5日、こどもの日にあたるこの日、杉並区の井草八幡宮にて「遅野井こども神楽」が奉納されました。
舞台に立つのは、地域の子どもたちで構成されたTokyoカグラッ子のメンバーたち。
主催:Tokyoカグラッ子プロジェクト実行委員会
後援:井草八幡宮
出演:TOKYOカグラッ子(地域の子どもたちによる神楽団体)
監修・指導・助演:武州里神楽 石山社中(理念:「神に捧げる技術を磨いて繋ぐ」)

編集後記(まいぷれ杉並区編集部員・激辛権蔵)
「笑って、舞って、つないでいく」それが、こども神楽の力だった。
「伝統芸能」と聞くと、どうしても敷居が高くて、かしこまった世界を想像してしまう。だけど今回、井草八幡宮で拝見した「遅野井こども神楽」は、それとはまったく違うものでした。
神楽殿に立つこどもたちの姿には、あたたかさと緊張感、そして“生きた文化”の力が確かに宿っていて──源頼朝が放った「遅い!」という言葉が、令和のこどもたちの舞によって再び語られた瞬間、私は「歴史って、今ここにあるんだな」と思わず鳥肌が立ちました。
2019年に始まり、コロナ禍を経ても歩みを止めず、都内各地の神社での上演を重ねてきたこのプロジェクト。「こどもたちが里神楽を学び、日本神話や伝統文化に親しむことで、日本人としての誇りと発信力を育む」という理念のもと、今年も井草八幡宮で素晴らしい舞台が実現されました。秋には天沼八幡神社での公演も予定されています。
この取り組みを支えるTokyoカグラッ子実行委員会の皆さま、そして主催として情熱を注がれてきた杉並区議会議員・田中ゆうたろう先生、奥様に、心から敬意を表します。また、現場での活動について丁寧にご説明くださり、取材にも快く応じてくださった奥様の温かさにも深く感謝申し上げます。
文化というのは、ただ「守るもの」じゃない。
こうして、“笑って、舞って、つないでいくもの”なんだと、今回しみじみと感じました。
区民の皆さん、ぜひ来年は神楽殿に足を運んでみてください。そして、未来を舞うこどもたちを、心から応援してください。彼らの姿はきっと、杉並の宝となっていきます。
まいぷれ杉並区編集部 激辛権蔵より
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。