杉並区 社会貢献や支援 地域に根付いた活動を行う団体の紹介
(更新)
境内に設けられたミニ田んぼでの体験型田植えを通じて、五穀豊穣を祈るこの祭りは、地域の子どもたちや家族連れにとって「食の原点」に触れる貴重な場となっています。

「御田植奉告祭」神前での儀式と実際の田植え体験を通じて、地域住民や子どもたちが農耕の大切さを学ぶ貴重な機会となっています。

天沼八幡神社(東京都杉並区)で毎年6月1日に開催される「御田植奉告祭」は、古来より続く稲作文化を伝承し、五穀豊穣を祈願する重要な神事です。


御田植奉告祭は、午前10時半、神職による祝詞奏上(のりとそうじょう)から始まります。玉串を奉り、今年も稲が健やかに育つことを祈願。神事を終えた後、参加者は境内に用意された水田で実際に稲の苗を植えます。
特筆すべきは、その苗がただの苗ではないということ。
この御田植奉告祭で使用される苗は、新潟県長岡市川口木沢地区から特別に届けられたものです。川口木沢は、信濃川流域に広がる美しい棚田が残る地域で、2004年の中越地震で大きな被害を受けながらも、地元の方々の尽力で復興し、現在も豊かな自然と稲作文化を守り続けています。
この地で大切に育てられた苗が、東京・杉並の神社の祭礼に使われる。それは単なる苗の提供を超えて、都市と農村をつなぐ心の懸け橋でもあります。


酒樽に稲を植えます
天沼八幡神社内の井戸から汲んだ、御神水をいれます
こうした取り組みの根底にあるのは、農業体験を通じて「いただきます」の意味を再認識してもらいたいという想いです。特に都市部の子どもたちにとって、土に触れること、苗を自分で植えることは、かけがえのない体験となります。
天沼八幡神社の御田植奉告祭では、川口木沢から届けられた苗を介して、都会に暮らす人々が地方の農村と「共にあること」を学び、感じることができるのです。


秋になると、祭りは「抜穂祭(ぬいぼさい)」へと続きます。春に植えた苗が実り、収穫を迎えたことに感謝する神事です。この一連の流れは、ただのイベントではなく、自然と共にある暮らしを見つめ直す、日本人の心の営みそのものです。

羽釜にはご飯を炊く準備ができています

乾燥させた杉とお米のもみ殻をかまどに入れごはんを炊きます
天沼八幡神社の御田植奉告祭は、農村と都市の交流、世代を超えた文化継承、そして地域の絆を再確認する場です。新潟の棚田から東京の神社へ、一本一本の苗に込められた想いが、都会の子どもたちの手で植えられ、大切な何かを育んでいます。

お米のもみ殻を地域の子ども達が釜戸に入れます

炊きあがる時間まで約15分ほど

炊きあがったご飯を感謝のうたの後に参加者皆でいただきました。

抜穂祭まで各家庭で稲を育てます
【編集後記】田植えのこころに触れて
今回、まいぷれ杉並区編集部は、杉並の地で古くから続く天沼八幡神社の御田植奉告祭に参列し、その数日前には新潟県長岡市川口木沢を訪ね、実際の棚田で田植え体験にも参加させていただきました。
神事では、静謐な空気の中、祝詞が奏上されるひとときに、今も変わらずこの土地で大切にされている稲作文化への敬意を感じました。地域の子どもたちが丁寧に苗を植える姿に、未来を託すようなあたたかい眼差しを感じることができました。
そして、川口木沢での田植え体験。
そこには、山あいに広がる美しい棚田と、笑顔で迎えてくださる農家の皆さんの姿がありました。長靴が泥に沈み、腰をかがめて苗を一束ずつ植える作業は、普段の生活では味わえない自然との対話そのものでした。土の感触、苗の香り、鳥の声、五感で感じるひとつひとつが、生きている実感を呼び起こします。
都会で過ごす私たちにとって、食べものがどこから来るのか、誰がどんな想いで育てているのかを肌で感じることができたこの時間は、言葉以上の価値がありました。
御田植奉告祭と川口木沢の田植え体験は、ただのイベントではなく、命と暮らしの原点にふれる旅だったように思います。
これから稲は季節の風と太陽を受けて育ち、秋には収穫のときを迎えます。
私たち編集部も、その過程を丁寧に伝えていきたいと思います。
まいぷれ杉並区 編集部
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