映画と人の交差点、それが、映画を愛するすべての人に贈られた「封切り酒場」なのです

杉並区 あの店この店 まいぷれ杉並区編集部がお邪魔したお店
映画愛が交差する秘密基地そこは「新しい出会い」の交差点

東京・高円寺の街の一角、北口から歩いて5分ほど。そこに、映画を心から愛する者たちが集い、酒を片手に語らう静かな聖域があります。それが「高円寺三角地帯」、そしてその中で不定期に開かれる特別なバー「封切り酒場」です。
「封切り酒場」は、もともとは封切り当日に映画を観た人だけが入れるというコンセプトで始まったトークバー。
しかし、回を重ねるごとにその門戸は広がり、現在では「映画が好き」「誰かと語り合いたい」という想いを持つ人なら誰でも気軽に参加できる空間となりました。
店内には大画面モニターと高音質スピーカーが設置され、来場者が持ち込んだ映画のサウンドトラックが流れ、時には作品の映像の一部が映し出されることもあります。その中で語られるのは、最新作から名作、インディーズ映画やマニアックなカルト作品まで、ジャンルを問わない濃密な映画談義。テーマは日ごとに異なり、「思い出の映画館」「ミュージカル特集」「映画解説者について語る夜」など、多彩な切り口で開催されています。


料金体系はとてもシンプル。1,500円のチャージでドリンク1杯とスナック食べ放題が付き、追加の飲食はキャッシュレスで対応。
スナックはディスペンサーから自由に取ることができ、持ち込みのサントラやフード、差し入れも歓迎という自由な雰囲気が、どこか“持ち寄りの上映会”のような親密さを生み出しています。

この映画酒場を企画・運営しているのが、映像ディレクターの川井拓也社長。大学で映像を学び、CM制作やライブ配信の現場で実績を重ねた後、自らのスタジオ「ヒマナイヌスタジオ」を立ち上げ、配信支援、そして執筆カフェなどユニークなクリエイティブ空間を生み出してきた人物です。
川井社長のクリエイティブ精神の源には、父・川井博司氏の存在が大きく影響しています。父は1960年代後半に洋楽雑誌『ティーンビート』を発行していた人物で、当時ビートルズや洋楽文化を日本に紹介する先駆者的存在でした。晩年、「自分は何も残せなかった」と語った父の言葉を胸に、拓也氏は「今を楽しむ」「今を形にする」ことを信条として、様々な表現活動や場作りに取り組んでいます。
高円寺三角地帯のスタジオに置かれた古い蛇腹カメラや8ミリ映写機などは、川井家に伝わる“絶滅メディア”のコレクション。そうした遺産を受け継ぎ、現代に蘇らせようという想いが「絶滅メディア博物館」の構想や、「封切り酒場」の空気感にも繋がっているのです。
「この場所は、父が最後にくれた贈り物かもしれない。だから、ここで爪痕を残したいんです。」
そう語る川井拓也氏の目は、映画と人との出会いが生まれる未来をまっすぐに見据えていました。


封切り酒場で交わされる映画談義は、ただの会話ではありません。それは作品を通じて自分を語り、他者とつながる対話であり、文化の継承でもあります。もし、あなたが映画を観て「誰かと話したい」と思ったなら、次回の封切り酒場をのぞいてみてください。そこには、きっとあなたの言葉に耳を傾けてくれる誰かがいます。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。