まいぷれ杉並区スタッフが行った!みた・きいた!
誰よりも速く前へ泳ぐことを自らの運命としたスイマーが、「水中パフォーマンス」という新しいエンターテイメントを生み出した、水の導化師の物語

一切のセリフなしで、プールという空間で、いつもお客さんを笑わせ、驚かせ、感動させる水中パフォーマンスを26年間も続けてきた不破央さんをひたすら追いかけたドキュメンタリー作品。

アスリートとしてのキャリア、青年海外協力隊での経験、道化師からパフォーマーへ「トゥリトネス」設立と活動実績、パフォーマー引退と後身の育成に至るまでを描いた長編ドキュメンタリー作品。
この映画は、監督・撮影の竹内佳嗣氏(「Drone Movie Contest」3年連続特別賞を受賞)が「プールという無言の空間で、人々をこれほどまでに笑わせ、驚かせ、そして感動させる人間がいるのか」と衝撃を受けたことを出発点に、不破央という稀有な存在の本質に迫ろうとした記録映画です。
この作品を観終えて、「水の導化師」という肩書が、単なる表現ではなく、まさに彼の人生そのものだったことに深く心を打たれました。セリフのない水中パフォーマンスという、極限まで抽象化された芸術行為でありながら、そこには確かな「言葉以上の伝達力」が宿っていたのです。
かつては日本記録を持つ平泳ぎの名選手としてオリンピックを目指し、三度の挑戦で夢破れた不破さん。そこから青年海外協力隊としてグアテマラに渡り、廃れたプールに命を吹き込み、子どもたちに水泳を教え、未来を拓いたその姿勢は、「競技者」から「教育者」、そして「表現者」へと進化し、そして「表現者」を引退した後身の育成の現在に至るプロセスそのものでした。
映画の中で印象的だったのは、スポーツジャーナリストの宮嶋泰子氏や東京大学名誉教授の武藤芳照氏が語る「不破という人間の多層性」です。また、現役時代からの親友である元プロレスラー斎藤彰俊氏との対話も、不破さんの競技への本気と芸への誠実さの両立を示してくれます。ドラマ『ウォーターボーイズ』の出演者たちの証言もまた、彼の演技指導が「泳ぎの技術」以上のものを伝えていたことを物語っていました。
会場では上映後、不破さんご本人が登壇し、ユーモアたっぷりのアフタートークが行われました。とりわけ印象的だったのが、「逆手バッククロール」と「学校でやってはいけない」と教わったという「つま先バタ足」による「後ろに進むクロール」の紹介。手の回転を本来とは逆に回し、足は太腿を使わず、つま先だけでひたすらバタつかせるという独特すぎる泳法に、会場は大爆笑の渦でした。さらに、「横に進む平泳ぎ」なる珍技も披露されましたが、そのあたりは…まあ、現場で体感した人にしかわからない妙技だったということでしょう(権蔵さんの記憶力の問題ではありません、たぶん)。
この日の観客には、小さな水泳教室に通う小学生たちも何人か来ていて、一方で大人の多くは水泳とほとんど縁のない人たち。そんな対照的な客層が、同じ空間で笑い、驚き、そして静かに感動する光景は、この映画が持つ力を象徴していたように思います。
製作費は、竹内監督らが立ち上げた独自ファンドを通じて、ファンや法人から全額が支援されました。それは、不破さんが築いてきた26年間が、いかに多くの人に希望や感動を与えてきたかを物語るものです。映画の中で描かれる、日本各地のショー、グアテマラでの原点回帰、そして最終公演までのカウントダウンは、まさに「生き方の記録」そのものでした。
7月5日の追加上映もすでに満席とのことですが、この映画はもっと多くの人の目に触れてほしい、全国の各地で上映されるべき作品です。水の中で生きた一人の表現者の姿を通して、人生の選び方、続ける勇気、やめる覚悟、そして「笑わせることの尊さ」を知ることができる―そんな稀有な映画でした。
トークの最後に不破さんがエンディング曲について紹介。作曲を担当したSAHAJi(サハジ)は、昨年英国メジャーデビューした富山出身の兄弟バンド。日本ではまだ知られていないビッグアーチストもその内容に魅了され、参加した映画です。

今日もトゥリトネスは元気に活動中。不破氏は指導、企画、運営の立場で今日も現場に立つ。

試写会当日、くらもとシネマ入り口でフライヤーを手にした権蔵さん。
| タイトル | he Swimming Clown ~水の導化師の物語~ |
| ジャンル | ドキュメンタリー |
| 製 作 | 有限会社オフィストゥリトネス |
| 企 画 | (株)DoBOON |
| 監督・撮影 | 竹内 佳嗣 |
| ナレーション | 妻夫木 聡 |
| ED曲 | ″Dive Into A New World″ SAHAJi (サハジ) |
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