杉並区 あの店この店 まいぷれ杉並区編集部がお邪魔したお店
白焼きで勝負、純国産うなぎをつくる「鰻のやどき 」上井草店

鰻のやどき 上井草店。
上井草という街は、都心の喧騒から一歩だけ距離を置いた、暮らしの匂いが濃い場所、
そんな上井草の空気の中に、「うなぎ」という言葉に対する固定観念を、静かに更新している店舗があります。
ここは、ただうなぎを出す店ではありません。
店の芯には、「うなぎは育つところから味が決まる」という思想があります。
それを語るのが、社長の秋山さんです。
料理の話より先に、秋山さんの口から出てくるのは、いつも同じテーマです。
水。 暗さ。 無投薬。 そして素材。
この店を理解する鍵は、キッチンだけではなく、実は 「養殖場」にあります。
うなぎの話をするとき、多くの人は「タレ」や「焼き」を先に思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、秋山社長の話は違います。いきなり出てくるのは、料理の話ではありません。
水の話から始まります。
山梨って 「水がめちゃめちゃ綺麗なんです。」
この一言に、すべてが詰まっています。
うなぎの臭みを消し、白焼きで勝負できるところまで素材を引き上げる。
そのために最初に必要なのは、育つ環境の設計だという考え方です。



鰻のやどき 秋山 良仁 社長
うなぎの養殖と聞くと、泥っぽい池で育てるイメージを持つ方が多いかもしれません。
秋山社長も、その一般的なイメージを前提にしたうえで、こう話されていました。
本当に水が綺麗だということ。
それは比喩ではなく、 「原料水が変わらないほど綺麗」 という表現が出てくるほどです。
この清い水が、臭みのないうなぎを生みます。
しかし、それだけでは終わりません。
水が綺麗になると、今度は別の問題が生じます。
うなぎは非常に臆病な魚で、明るい環境では餌を食べません。
本来は泥っぽい場所に身を隠すことで、安心して餌を食べることができます。
ところが、水が綺麗になると隠れ場所がなくなり、警戒心が強くなってしまいます。
つまり、 「清水」 はうなぎにとってストレスにもなり得るのです。
そこで、秋山社長は環境を逆方向に設計します。

秋山社長の養殖の話で、特に印象に残るのがこの点です。
「真っ黒いブルーシートで完全に暗くしています」
「昼でも真っ暗です」
清い水を使うために、あえて暗さをつくる。
これは単なる工夫ではなく、 清水養殖を成立させるための条件 として語られています。
一般的な養殖方法とはやや異なりますが、
うなぎが安心して餌を食べられるように、池の周囲を囲い、光を遮断し、闇をつくります。
料理の現場ではなく、まず 「育てる現場」 から、臭みのない味づくりが始まっているのです。
次に語られるのは、はっきりとした姿勢です。
「一切、薬は使っていません。」
これは単なる「安心・安全」のアピールではありません。
秋山社長の語り口は、非常に実務的で、味に直結する話として語られます。
無投薬は理念ではなく、味をつくるための設計なのです。
餌についても、こう説明されています。
魚粉をベースにした餌 を与えています。
余計なものを入れず、余計な方向に味を寄せない。
水と環境で臭みの原因を断ち、無投薬と餌で味の純度を整える。
この積み重ねが、後に語られる 「白焼きで勝負できる理由」 につながっていきます。

純国産鰻 うな丼

純国産 鰻蒲焼白焼重
うなぎ料理は、タレの存在感が非常に強い料理です。
そのため、ある程度の味はタレで整えることができます。
しかし、白焼きは違います。
味付けがなく、臭みが出ればすぐにわかります。
それでも秋山社長は、白焼きを主役として出します。
白焼きを堂々と出せること自体が、 素材への自信の証明 なのです。
臭みがないから白焼きが成立し、
白焼きが成立するから素材の純度が証明される。
それが、秋山社長の品質の測り方です。

うなぎは、さばきの段階で品質が大きく変わります。
そのブレを防ぐため、秋山社長は加工工程にも目を向けています。
・うなぎは山梨でさばく
・毎日使う分だけを送る
まとめて処理するのではなく、日々必要な量を回す。
在庫ではなく、リズムで鮮度をつくる という考え方です。
素材主義の考え方は、タレにも貫かれています。・化学調味料不使用
・100年タレづくりを専門にしてきた会社に依頼
素材を壊さないために、余計なものを入れない。
この姿勢は、水や餌の考え方と 完全に一致 しています。

「素材が8割だと思っています。」
すごい職人技で逆転するのではなく、
逆転が必要ないところまで 素材を引き上げる。
だから白焼きで勝て、
だから臭みがなく、
だから食べた後に重さが残らない。
秋山社長は、もともとうなぎが苦手だったそうです。
それでも 「これは食べられる」 と言います。
うなぎが苦手な方、泥臭いと感じる方にも、
一度食べてみてほしいと。
この言葉は、とても説得力があります。
好きな人の推薦よりも、嫌いだった人の 「食べられる」 の方が、心に届くからです。
秋山社長のこだわりは、点ではありません。
すべてが 一本の線 でつながっています。
・清い湧水
・闇をつくる環境設計
・無投薬と餌
・青うなぎ
・白焼き
・稚魚の信用
・供給規模
・鮮度管理
・化学調味料不使用の(秘伝の)タレ
・素材8割という覚悟
秋山社長がつくっているのは、 「うなぎ屋」 ではなく、 うなぎの味の構造 です。
水と闇で土台をつくり、
無投薬で濁りを消し、
白焼きで誤魔化しを許さない。
その積み重ねの先に、 「これが本当の日本うなぎ」 と言える素材が立ち上がります。
料理は、その素材が届いてから始まります。
だからこそ、このうなぎには 説得力 があります。
うなぎの味は、口の中だけで完結しません。
育つ現場の空気までが、味の一部になっています。


鰻の白焼串

鰻のえんがわ唐揚げ

鰻の天ぷら

鰻のフライ

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